「ジーメンスか、入れ」
「報告事項があります浮島少佐」
「何事だ?」
「ハーキマー上院議員が2時間ほど前自宅で他殺死体で発見されました、死因は刃物による頸部動脈切断の失血死だそうです」
「ふーん、あの口達者なデブオヤジが死んだか、そいつあ気の毒なことだな」
「只今連邦捜査局が全力を挙げて捜査中ですが目下犯人の見当はつかないようです」
「この件に軍部は介入しないのか?あの男はあれでも元は軍閥の叩き上げだろう?」
「そんなことをすれば新規プロジェクトの予算案で揉めていた折ですし軍が暗殺に関与していますと仄めかしているようなものです」
「そりゃそうか、まあ、事実、関与してるんだけどな」
「まず犯人は挙がらないでしょう」
「結構なことだ、色々と悪い噂のあった人間だからな、なんでも夜な夜ないかがわしいパーティーを派手にやってたらしいじゃないか?お抱えの娼婦はウン十人は居たらしいしモルディナ自治領から子供を買っては胸くそ悪いショーだかなんだかで使い捨ててたとかいう噂まであるしな、死んで喜んでるやつの方が多いんじゃないか?」
「少佐、死者の悪口は慎まれた方がよろしいかと」
「相変わらずお堅いヤツだなお前は」
「…しかしそれに関しては珍しく遼那(リャオスン)も同意見でしたが…」
「何か言ったか?」
「いえ、たいしたことではありません」
「まあいい、で?肝心の『犯人』は無事回収できたのか」
「はい、つい先ほど本部に戻りました」
「いつもながら見事な手際だな、お前さんの優秀な部下は」
「恐縮です」
「しかしあのデブが死んでくれたおかげで今度のプロジェクトも滞りなく進むだろうな、ヤツの息のかかった軍部のお偉いさん達もこれで予算上乗せに賛成せざるを得ないだろうし、こちらにとっちゃいいことだらけだ、連邦局が『協力』を求めてきたら断ればいい話だし、さて諸君らもご苦労だったゆっくり休養をとりたまえ」
「はい、ではこれにて失礼させていただきます」




Two hours ago  ―二時間前―


『こちらタンゴ1、予定通りランデブー地点で“人形”を回収、直ちに撤収する』
「了解、タンゴ1すみやかに帰還せよ」

遼那(リャオスン)♂

「只今戻りました、ジーメンス大尉」
「ご苦労だった遼那少尉」
「ふはぁ…」
「どうした、お前にしては珍しく滅入った様子だな」
「いえ、だってね、あのハーキマーって上院議員、パーティーを開くって言うからてっきりお上品な上流階級の夜会か何かかと思ったら高級コールガールを何十人も呼んでの乱交パーティーだったんですよ、まあ悪趣味だったらないですよ。僕は他のメイドに混じって給仕をやらされたんですけど、なんとその時議員にお尻撫で回されたんですよ!?もう気色悪言ったら!だからあの男の首を掻っ切った時はスカッとしましたけどね、あんな好色肥満体、死んで喜んでる人のほうが多いんじゃないですかね」
「触れられてよく男だとバレなかったな」
「僕もヒヤッとはしたんですけどね、まあ向こうさんはベロンベロンに酔っ払ってらっしゃいましたから。でもって、いい尻だって言われたんですけどね。…嬉しくもなんとも無いですけどバレなかったのって僕もしかして本当にいい尻してるんでしょうかね?ねえ大尉」
「知るか」