−連合陸軍17連隊の日誌より一部抜粋−

2月3日 後方攪乱任務中、我が隊は敵の斥候中隊と接触、戦闘になるもこれを殲滅。
本日の戦闘における捕虜は8名。
捕虜の処遇についてはジュネーブ条約に従い正当に扱うべく軍事顧問に一任するものとす。

以上。


軍事顧問である部隊長は今、ごく個人的な葛藤を抱えていた。

というのも、本日、捕虜として捉えた敵兵8名の中に一名の衛生兵がいたのだったが、
データには21歳とあるのだが、これが実にまだ十代と言っても十分に通用しそうなほど童顔で華奢な美青年だったのだ。
いや、美少年、といった方が正しいかもしれない。
白磁のようにキメ細やかな白い肌に、短く刈られてはいるが輝く金糸の髪、長い睫毛に隙間無く縁取られたエメラルドの瞳と華奢な肢体。
それこそ女性とみまごうばかりの美貌である。
よくもこんな綺麗な男が存在したものだと神の奇跡すら信じてしまいそうである。

女であればまさに部隊長のストライクゾーンだ。
だがしかし、男は男である。

女兵士であれば顔など多少不味くとも(そもそも女性兵士にも美人は少ないが)、かの条約違反などはあってないようなもの。
集団レイプは定石だ。
そもそも女性兵士への軍内で群発する性的暴行すら問題になっているほどなのだ。
前線で戦う兵士たちの慰安も兼ねて輪姦した後は速やかに殺害、公式記録には「交戦時に射殺」とするのが常だった。
要するに端から捕虜の数には入れないのである。
兵士達とておこぼれをもらえれば誰も文句など言わないのだ。
稀に侵攻作戦中に小さな農村でもあって小娘などがいればもうけものだ。
銃で脅すか2、3発も殴ればすぐ大人しくなる。
あとはせいぜい楽しませてもらった後額に一発ぶち込めばそれで片が付く。
戦場においては人の命など安いものなのだ。

ちなみに軍内の規律には同性間での性行為は一応、禁止行為とされている、
そんなものを律儀に守ってる者など厳密にはいはしないし誰も厳格に罰そうなどとは思ってはいないだろうが。

部隊長が悩んでいるのは人道的立場や隊規違反、モラル道徳云々の問題ではない、つまり彼はゲイではないのである。
むしろ同性愛の類を見下しては嫌悪している典型的な差別者であった。
だがよもやここに来て、これほど自分好みの顔をした美少年がこの世に存在するとは夢にも思わず、図らずもその信念(?)が揺らいでいるのであった。
しかしその葛藤とは所詮、生々しい欲望と彼自身のあってないような最後の一線とがせめぎあってのことである。
捕虜の虐待は禁止されているが殺してしまえば無論、死人に口なしである。
それでも彼は既に薄くなった頭髪を掻き毟り、見事なメタボリック体型の身を捩り、悩みぬいていた。

そして部隊長は一昼夜悩んだ挙句、実に唾棄すべきある考えに至った。

そして翌朝、早速とばかりに簡素な木の椅子とテーブルのみが置かれた訊問室に捕虜となったかの衛生兵が両腕を拘束され憲兵に抱えられて半ば引き摺られるようにして連行されてきた。
この彼は、その女性のような可憐な外見からは想像も付かないほど威勢が良かった。
或いはその外見からくるコンプレックスの裏返しなのかもしれないがこの際どうでもいいことである。
自分を取り押さえた憲兵を振り払うようにして不自由な身を捩じらせながら彼の国の言葉で目の前に立つ中隊長に悪態をついている。
「Чёрт возьми!」
要約すれば大変下品な罵倒だがそんなものは知ったことではない。

補給部隊が使用する家畜屠殺用の斧を手にした部隊長は部下に命令し、
備え付けの椅子に彼の上半身を力ずくでねじ伏せさせた。

「Не надо!!」
再び罵声を吐きかけて顔をあげた次の瞬間、彼の表情が凍りついた。

彼が見たのはその斧を自分の首筋めがけて今まさに振り下ろそうとする部隊長の姿だった。
斧が彼をねじ伏せた椅子に鈍い音を立ててその切っ先を食い込ませるのに数瞬遅れ、頭部が床に落ちる鈍い音が狭い訊問室に響いた。
彼は断末魔の叫び声すら発する間もなくその命を断ち切られていた。

部隊長は床に転がるこの少年の首を両手で掴んで持ち上げた。
薄汚い欲望に歪んだ顔を取り繕うともせず、その柔らかな頬を包みこんで美しい顔を眺めまわして堪能する。
やはり好みのタイプである。
その表情は死の直前の恐怖を張り付けてはいなかった。
むしろ僅かに瞼を伏せ、穏かともとれる様なものであった。
人間というのは面白いもので、こうして一思いに斬首されてしまうと不思議なほど穏かで無表情になるものだ。
まだ首の断面からは生々しい血が滴り落ちているが気になどしない。
椅子に伏せられたままの胴体も間欠的に血を噴出させながらまだ僅かに四肢を痙攣させていた。

顔は好みでその首から下が気に入らないのであれば顔だけにしてしまえばいい。
首だけならば男も女も関係ない。
ようするに部隊長はそう考えたのだ。

まずはすでに充血しきっている薄汚い性器を剥き出しにすると、薄く開かれた真珠のような歯の並びが僅かに見えている彼の口に押し当てる、生命を失ったばかりの口内は簡単にその進入を許したが無論のこと命の無いそれが望んだような愛撫など返してくるわけも無い。
快感が得られないわけではなかったが期待したほどではない。
部隊長は僅かに残念そうに肩をおとした。
しかし次の瞬間ふと何かを思いついたらしく再び下品な笑顔が現れた。

今度はその手にした首の向き変えその切断面にある食道を探し当て、あろうことかそこに屹立した性器の挿入を試みた。
まだ暖かいその中は非常に狭く想像以上に具合がいい。
おまけにまだ滴り落ちるこの美少年の血が潤滑液の役割を果たしたのでその快感は想像以上だ。
気を良くした部隊長さらに性器を深々と突き込んだ。

通常の感覚の持ち主ならおぞましい以外の何物でもないその行為に眉をひそめ、中にはあからさまに顔を背ける部下たちを無視し、中隊長は掴んだ少年の頭部と自らの腰とを激しく動かして完全に一方的な快感ををむさぼった。
少年の血と部隊長の先走り液とが入り混じった淫猥にして身の毛のよだつ音が狭い部屋に響く。
やがて部隊長が絶頂に達し。
全身を大きく痙攣させて野獣じみた唸り声と共に死体の首に精液をそそぎ込んだ。

ややあって、少年の口と鼻から白い液体がドロリと零れ落ちた。
その光景もまたゆがんだ性欲を昂進させる眺めだった。

これはいい楽しみを見つけたものだと充血した獣のような目で部隊長は品のない笑みを浮かべた。
これからの捕虜に対する「訊問」がたのしくなりそうである。
まあ、最も、それは美形な敵兵を捕まえられればの話ではあるが。

その後、ついでとばかりに頭蓋骨に穴を開けてそこにも性器を突っ込んで柔らかい脳の感触も楽しんでみたり、
さらには片方の目を抉り出しその眼孔までをも弄んだそうだ。
こうしてこの少年の首は、この日の彼の性欲と征服欲とを存分に満たしてくれたのであった。

その後、ただでさえあまり部下たちからの信頼の薄かったこの部隊長の評判が地に落ちたのは言うまでも無い。
まあ、彼にとってはどうでもいいことではあったが。





完。




一人評論・すなおにケツに突っ込めよと。