1代目 松下 一郎 悪魔くん


いまここに人類が かつて生んだことのない頭脳の持ち主現る!

【悪魔くん 千年王国】/ちくま文庫

この一代目「悪魔くん」こと松下一郎はといえばアニメ化もドラマ化もされていませんし、
年代も相当古く、原作が有るのみですから一般知名度的には一番低いかもしれません、

が、この初出の悪魔くんをご存知の方々からはその特異な存在感と強烈な個性で最もコアな人気と地位を確立しているようです。
例に漏れず、この私もその異様なる魅力にあてられた一人です。

私がその人「松下一郎」に出会ったのは高校時代、
先輩の書籍集からでした。
アニメの悪魔くんこと埋れ木真吾くんしか知らなかった私はこの
「悪魔くん 千年王国」
を読んでかなり衝撃を受けました。

「ち・・違う・・これ、私の知ってる「悪魔くん」じゃない・・!!」


何分アニメ自体も古いものになりつつありましたし、
私は「悪魔くん」に対して「通称「悪魔くん」と呼ばれる少年が12使徒(悪魔)を従えて悪と戦う勧善懲悪ストーリー」
という簡潔なイメージしか持っていなかったのです。
しかし、悪と戦う正義の味方が「悪魔くん」なんてのも変な話だな?とは思っていたのですが、
従えているのが12の悪魔だからなのかな?と解釈していました。


しかし、この「悪魔くん 千年王国」を読んだ私の脳裏には

「そうか・・悪魔のような子供だから悪魔くんだったのか・・・」

と認識を新たにする言葉が浮かんでいました。
えらいセンセーショナルです。

他の悪魔くんと決定的に違うところはまずその性格もですが、
日本三大電機メーカーの一つ「太平洋電機」の社長令息であるということだと思います。
世紀の大天才の上に大金持ちです。
そして天才であることを微塵も隠そうとしません。

3歳のときパパにねだって買ってもらった奥軽井沢に広大な別荘地に一人住んでいます、
もンのすげぇ目付き悪いです、タレ目です、あからさまに全身から異様な妖気を立ち上らせてます。

お世話役兼別荘番のじいやさんにまで「あの方に逆らっては絶対いけない」と目茶苦茶恐れられてます。

でもまだ
小学校2年生だったりします、
逸脱した大天才であることを遺憾無く発揮し、

小学校を退学になるという前人未到の快挙を成し遂げてます(一体何をしたんだ松下・・)。

彼の母親に至っては理解できぬ頭脳を持つ息子を不憫に思う余りか畏怖する余りか結局病死してしまいました。
そんなシビアな背景を背負っているのは松下だけです。

罪無き家庭教師を使徒の魂の入れ物にしたのも松下だけです、

悪魔の名門メフィスト一族の力をまったく借りずにサシで悪魔(サタン)と対決したのも松下だけです。

怒りに任せて学校の先生の耳を素手で引き千切ったのも松下だけです。

一度死んで生き返ったのも松下だけです。

黒い、黒いぞ松下、全く悪魔の所業に他ならないぞ松下、

だから「悪魔」くんなのか、と初めて納得したぞ松下、

ビバ松下、

そんなわけです。



ところで、この物語の重要なキーポイントとなる人物が
佐藤さん


この人は、また、原作中では最も薄幸な方でしたね。
そもそも社長に松下の家庭教師役を頼まれたりしなければね・・・。

しかし聞けばスゴイ経歴の持ち主で、東大を主席で卒業し、一流企業の太平洋電機に就職、
性格は真面目で責任感が強くて一本気、そのうえ自他共に認めるイイ男とくらぁ、アータ実際いたら奇跡のようなお方ですよ。
喋りも丁寧な事から恐らく彼は御家柄もそこそこ良いのではないかと推測されます、
きっとこれまでの人生を順風満帆に送って来て、
何一つそんな幸運を有り難く思うことも疑う事無く当たり前と思って過ごしてきたのでしょう。
本来ならこれからもずっとそうやって生きていけるはずでした。

そんな彼が松下に逢って、松下の謀略によって例のアレな姿に変えられてしまって、
彼の人生で初めてどうにもならない挫折と絶望と屈辱を味わったんじゃないでしょうか?

残念ながらその時その経験は彼を成長させてはくれなかったようで、
そんな彼は一度は松下を裏切り殺してしまったけど・・。

でもその後彼が幸せだったかって言うと、全然そうはならなくて、
それこそ体を悪くするほど後悔して。

松下が復活したこの後は、きっと今度こそ松下の良き部下となってくれるでしょう、

だってもともと優秀なヒトなんだしね。


「頭の二つある生き物がそだたないように・・・・・・
とびぬけた頭脳の子は腹からでるとまもなく死んだものだ だが 悪魔くんは 神が殺しそこねたのだ」

(この台詞もんのすげえ好き)



【貸本漫画傑作選・悪魔くん】(上)(下)/朝日ソノラマ
【悪魔くん・世紀末大戦】/光文社コミックス


本当にびっくりです。
何がって、まず松下の容姿です。

「・・これ・・・人間・・だよな?」

と思わず人間であるかどうかすら断定するのに躊躇せんばかりの迫力です。
というわけで、何故この2作品をまとめたかと言うと、
「千年王国」の松下とのビジュアルの違いと「貸本版」「世紀末大戦」とのつながりです。

他の悪魔くんサイト様で言われているところの表現をお借りすれば

「極悪キューピー面」
です。
見慣れてくれば大層味が有るのですが最初見たときには本を手から取り落とすほどの驚きでした。(やや誇張)
話的には「千年王国」は独立して完結していますが上記2作品は設定が続いています。
貸本版のほうは「千年王国」よりも前に描かれた物で、
内容はほとんど同じです。
呼び出す悪魔が違ってたりラストが少し違ってたり。
でも「千年王国」は普通に読めるけどこっちを読んでるとクラクラしますね、何故か。

「世紀末大戦」の方は残念ながら現在絶版になっているそうです。
私は運良く手に入れられましたが・・。

「貸本版」のラストから34年
世紀末の日本に松下一郎が甦る!
ヘカス・ヘカス・エステベベロイ!!
かあああぁあぁあっこいいです!!キューピーだけど!!

本当に34年経ってから続編が描かれるなんてスゴイですよね。
灰怒鑼さんのような紅一点(今まで黒ばっかだったもんなぁ・・女がいても鳥の姿だし・・)
も加えた新メンバーで再び理想郷・千年王国建国を目指す。

なんにせよ興味をもたれたらまずは「千年王国」から読まれることをお勧めします。


老婆心ながら。
現在絶版になっているものを読んで見たいならオークションで探すよりネット古本屋で探すほうがいいと思いますヨ。
私はほとんどの悪魔くんシリーズをそうやって集めましたから。
それもかなりすんなりと。


★注意★
ここに記載した書籍の出版社は管理人所有の書籍を参照しています。
同タイトルで他の出版社からも出ているものもあります。
書籍の参考資料として書いたものではないので御了承ください。
ヘボ。