花見

〜酒癖〜

テレビの天気予報とともにあった桜前線を松下と蛙男と佐藤(他十名の使徒も別の場所で見ていました)が一緒に見ていた。

「メシア。お花見行きませんか?」
「ば、ばか。メシアは千年王国のためにお忙しいのだ」

口ではそういっている蛙男の目は、どう見ても「お酒が飲みたい」×百回唱えているようにしか見えないのだが。

「・・僕は別にいいぞ」
「本当ですか!?」
「ああ。たまには息抜きも必要だろ」



花見当日。
埋もれ木、山田などもそろって近くの公園で花見をすることにした。
「かわいいね。松下君その着物」
「嬉しくない」
別荘番の奥さん(おはな)に無理やり着せられたその着物は、どう見ても女性物の柄が蝶で薄いものだった。

「何かゲームでもしない?」
「じゃんけんで負けた人がカラオケっていうのは?(フルコーラス(しかもアニメばっかり))」
「わかった」
「じゃんけんぽん」
松下 パー 山田 チョキ 埋もれ木 チョキ
「松下君の負け。はい罰ゲーム」
「う〜っ」

子供たちは、ごく普通にカラオケとかゲームとかで盛り上がり。

「はは・・」
「結構飲めるのだな。佐藤」
「はい、まあたしなむ程度に」

大人たちは、酒やお弁当、雑談に酔っていた。

そんな中、事件は起こった。

「あっ、また負けた(ただいま0勝5敗)」
「メシア。頑張ってください」

子供のゲームまで酒の肴にしながら佐藤は意気揚揚と答えた。

「残酷な天使のテーゼ 窓辺からやがて飛び・・ごほごほ(むせた)」
「ああ。坊ちゃん。はい、ジュースです」
「ありがとう」
ごくっ。
「ん?あっ、ちょっと悪魔さん。メシアに何飲ませているのですか?」
「えっ、ジュース」
「それお酒でしょう」

悪魔は、グラスに残っているジュース(お酒)の匂いをかいで作ったようなあっちゃあと言う感じの顔で「どうしよう?」と呟いた。


「メ、メシア」
「・・なあにv佐藤v」


そこにいた松下は、普通だった。
いや、普通すぎた。普通すぎるほど普通のかわいらしい小学二年生にみえた。

 か、かわいい

使徒一同が一瞬この顔を見るために生まれてきたのだという変な思いが芽生える。

「佐藤ぅ」

舌足らずみたいな甘い囁きで松下は、佐藤に近づいて、潤んだ今にも零れ落ちそうな涙をためた瞳で見つめていた松下は何を思ったのか自分の着ていた着物を脱ぎ始めた。
その行動にその場にいた全員(埋もれ木と山田以外(まだ子供だから))の頭が真っ白になる・・。
 こ、これは誘惑する行為じゃないか。
羨ましい(←羨ましいと思ったのは蛙だけ)


「あのね・。僕本当は佐藤が好きなの・・」


さあ。この熱烈で強烈なかわいい子供の誘惑に東大出のまじめ男はどう対処するか・・。


「ありがとう御座います。私もメシアのことが好きですよ?」
「〜っっ」

(問題発言!!)

「だから抱いて?」
「(にこ)もう少し大きくなったら・・考えてみます」


考えるのか!!
ていうか、満面の笑みはなんだ。


「いやぁ、今すぐがいいの」
「ダメ・・です。あまりわがまま言うと嫌いになりますよ」
「・・・」

な、なんていうか、使途よりも先生になったほうが良かったのではないかというほどの(一応元家庭教師だけど)上手い切り返しの仕方に一同が心の中で拍手を贈った。

「わかった」
「メシア。それでは少しお休みください。お酒の酔いが覚めるまで」

やさしいその声がまるで子守唄であるかのように松下は、目を虚ろに佐藤の腕をつかんだ。

「『メシア』じゃなくて。一郎・・」
「・・・。はい、一郎さま。お休みを」

一郎と呼ばれたのが嬉しかったのかそれとも酒の所為なのか分からないが、松下は少しだけ笑ったように目を細めると佐藤のひざで寝息を立てた。

「・・・」
「佐藤??」

眠っている松下とそれにつられて眠ってしまった埋もれ木、山田を見ながら無言になっている佐藤に蛙男は声をかけた。

「襲いそうになるかと思いました」
「は?」
「だって、メシアすごくかわいくて、『抱いて』って言われたときちょっと本気で相手しちゃおうとか思いかけましたもん」

 なるほど、理性とかそういうので欲求を抑えていたのか。
「さ、こんなところで寝かせては、メシアが風邪を引きます。早く家に運びましょう」
「あ、ああ」
でも、よくあんな熱烈な誘いに我慢できた物だ。
と使徒たち全員が頷きながら、埋もれ木と山田、あとカラオケセットやビール瓶などをかたづけ帰っていった。
佐藤と松下だけをおいて。

「よいしょっと」
「・・・だ」

佐藤が、松下を姫抱っこ(笑)したときに松下の口から何か声が漏れた。

「本気だからな」
「・・起きてらっしゃったのですか?」
「あんなに大声で喋られて眠っていられるか馬鹿者」
口調がいつもどおりに戻っている。酔いが覚めたのだろう。
「なにが・・本気なのですか?」
「・・お前が好きだと・・」

「知っていましたよ」


真顔でそう答えられて一瞬松下は、
驚いた風な顔をしたがすぐにいつもどおりの顔に戻った。

「メシアが好意をもたれているのはしっていましたが、まだ私は、あなたが好きなのかどうかわからない、だから・・」
「さっき、もう少し大人になったらといったのか?」
「あなたが、大きくなられてからでも私は、そこまで年はとってないでしょう?」
にこやかにだけど、少し暗めに佐藤は、松下に問い掛ける。
「そうだな」
「ところで・・」

今度は本当に明るいきれいなやさしい声で佐藤は問い掛ける。少しだけ笑いをかみ殺しながら・・。
「『抱いて』といって着物を脱いだのは?本気だったのですか?」
「〜〜っっ、あ、あれは、酒で見境がなくなっていてそれで・・」

真っ赤になる顔を隠そうともせずに慌てている松下に佐藤は、
ゆっくりと近づいて額に軽くキスをした。

「〜っ!!」
「大きくなるまでは、キスで我慢していてくださいね」

そう意地悪そうに佐藤は囁く。

「だったら、何で口にしないんだ」
「口にするのは、私が貴方を本当に好きだと思えるようになったときです」


だから、それまでは。恋人でも友達でもなくてただの使途と主であるように。
そう、心でどこにいるかも分からない神様に願いを託してもう一度松下の額にキスをする。
そのキスは裏切りではなく忠誠の証でもない、ただの愛の約束。




時にはこんな花見もいい。
桜を見ながら佐藤は思った。




Fin…


【ケイキョより】

うわ〜お!!
下克上!!
余裕じゃねえか佐藤!
意外なほど大人の男だったんだな!!お前!

…こんな珍しい驚くほどの余裕を持った佐藤にちょっと惚れましたvv
「もう少し大きくなったら・・考えてみます」だってよ!!!聞いたかオイ!!(興奮)

それにしても可愛い松下…かぁ…。
見たいと思っているのは使徒たちだけじゃないと思うんですけどね(笑)

しかしやっぱりあと最低10年は待たないと、佐藤さんも犯罪者にはなりたく無いでしょうから、
松下、我慢してね☆

すみません、可愛い松下より大人の佐藤氏に萌えてしまいました、わたくし。
いや、参ったな。
珍しい、立場逆転のお話。
色々と萌えどころの多き小説、ありがとうございました!!!!


蛙男が酒豪、という所にも驚きを隠せませんよ。

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