十年後の未来から・・。




メシアがこの頃、一週間ほど姿を見せません。
まあ、あの人のことですから飢えて死んでいたり悪魔に殺されていたりという心配はないのでしょうが・・・。
やっぱり少し気になって本当は、とても大切な用がない限りはいてはいけないといわれていた召喚部屋のドアをノックする。しかし、返事はない。
これはいつものことなので、気にせずに二の句をつなげる。
「メシア〜。入りますよ」
鍵がかかっていても私がマスターキーを持っているから、ノックなどしなくてもいいのだが。


部屋の中は、白っぽいというか黒っぽいというか・・灰色に似た煙が充満していた。悪魔でも呼んだのだろうか?
そう思いながら周りを見渡すと本棚あたりに人影が見えた。

メシアかと思って近づいていくとそこにいたのは、見たこともない18歳くらいの銀髪で垂れ目の青年。

「・・っ!!泥棒!?」

見慣れない侵入者に私が一瞬叫びそうになったとき。冷たい大きな(私よりは小さいけど)手が口を抑える。

「おいっ、佐藤。落ち着け!!この馬鹿者!!」

その言い方に私は、はっとして私が泥棒だと思った青年の容姿をよく観察する。
銀色の髪は、所々はねていて、服は、黄色と黒のストライプ。

「も、もしかして。メシア!!」
「10年後の、だがな」


10年後?


「召喚を間違ってな・・」
「・・・」
まじまじとメシアを見ると十年後には結構イケ面なのだなと思う。可愛いというか格好いいというか分からないけど・・?
「・・あと・・。返事をもらいに来たんだ」
「返事・・?」
「・・佐藤・・お前が好きだ・・」

前のように酔った勢いで言ったものではなく。ちゃんと意識をはっきりともっていてそういわれた場合、私はどうしたらいいのでしょう・・?

「・・私もメシアが好きですよ?」
少し曖昧に友達か何かに好きだというように私は言った。

「・・そんなものじゃない!!僕が欲しいのは」
君には、どういったら伝わる・・。
僕はこんなに思っているのに・・。
僕は、君の望むままに大きくなった。なのに。なぜ・・君は、僕の愛を受け入れてくれないの・・・。


「メシア・・」
急に泣き出してしまったメシアに私は、少し困惑しながらどうした物か考える。

「・・僕が・・言いたいのは・・愛しているって意味で・・だよ」

泣きながら、涙を流しながら、途切れ途切れに紡がれるのは、私への愛の言葉・・。
そんな君を愛しく思う・・。


ああ・・。私は、本当に馬鹿だ・・。こんな気持ちに本当はずっと前から気付いていた。

抱きしめたいと抱きたいと・・耳元で呟いてしまいたいと。心の奥底で思っていたはずなのに。
気付かない振りをして、あなたを突き放してしまおうとしていた・・。
あなたは、こんなに私のことを思ってくれていたのに・・・。


「人をっ・・・愛すること・・なんてっ・・しらなければっ・・よかった・・」

人を愛することを知らなければ、こんなに苦しい思いはしなかったのに・・。こんなに・・・
胸が張り裂けそうな切ない思いなんて知らなかったのに・・・。
10年、僕は待ったんだよ・・。長かったけれど・・全ては、君のため。
「ばかっ・・・。どうして・・僕の・・・」
僕の気持ちに・・僕の心に・・・、僕の全てに・・・。
10年前から続いてきたこの・・、

「愛に・・きづいて・・くれなかったんだよ・・」

その言葉が深く胸に突き刺さる・・。
そう、気付いていたんだ。本当は、昔から君の想いにも自分のこのモヤッとした感情にも

「・・メシア」

あなたを強く抱きしめた。

「10年も待たせてごめんなさい・・」

できるのなら10年前のあなたが来たときにもこうしてあげられればいい・・。

「きっと・・あなたが帰った後の10年後には・・・・」

タイムパラドックスが本当に起こるのかわからないでも・・・。

「きっとあなたの隣に私がいる10年後の少し年寄りの私がきっといるから・・・」

あなたが私に勇気をくれたから・・。今このときから頑張ればきっと未来は変わるはずだから。

「信じて・・。もう泣かないで・・」
10年後のあなたが消えて行くとき、私は耳元で囁いた・・。
あなたの名前を・・。愛しい気持ちをこめて。


「一郎・・・。愛しています」
この声が、10年後のあなたの耳にちゃんと届いていますように。


「・・ん・・?」
「おはようございます」
「・・佐藤・・?・・なんで僕は、お前に抱きしめられている?」
「気分です・・。気分」
「ふーん?」
幼い主は、何時の間に寝たのかとまた別のことに疑問を飛ばした。
「・・メシア」
「ん・・?」
「私は・・・」

10年後の私は・・、どうしているのだろう・・。
あなたの隣にいるのだろうか?それとも・・・。

「あなたを愛しています・・・」




Fin…






【ケイキョより】

来ました、大人松下。
しかし10年キッチリ待ってたなんてなかなか根性ありますね、さすがは松下です。
気合の入った10年越しの告白ですか、ロマンティックが止まりません。

…松下も大人になるんですよね。
当たり前のことなんですが、どうも想像するのが難しい…(笑)


戻る